ここでは利用規約の作成時に注意すべき法令やサービスの策定時に許認可などが関係する可能性のあるサービスについて説明したいと思います。
利用規約に関わる法令1:特定商取引法
有償提供のBtoCのサービスでは消費者契約法の適用を受けることはトップページで説明しています。
特定商取引法もまた消費者向けの有償のサービスで適用を受けます。
オンライン語学学習サービスなど
有償で消費者に対して提供されるウェブサービスでも、
- オンライン語学学習サービス
- オンラインのパソコン教室
- オンライン家庭教師
などは特定商取引法の特定継続的役務提供に該当する場合があります。他にも学習塾やエステサロン、医療美容などもこの特定継続的役務提供に含まれます。が、これらはオンラインでの提供は難しいのでここでは除外します。
この特定継続的役務提供に該当する場合には
- 契約締結前後に概要書面、契約書面という2種類の書面の発行
- 契約書面を受け取ってから8日間のクーリングオフ制度を必ず設定
- 契約期間中の中途解約に際しての返金額の規制
などの義務が課せられています。
利用規約の作成時に記載すべき内容
特定継続的役務提供に該当する場合、利用規約では
- サービス利用の有効期間と更新方法の定め
- 中途解約やその際の返金額の計算に関する規定
- クーリングオフに関する規定
等をしっかり定める必要があります。
その他の有償のBtoCサービス
有償で消費者に対して提供されるウェブサービスや消費者向けのネットショップは、ほぼ特定商取引法の「通信販売」に該当します。この通信販売にはクーリングオフの義務付けなどはありません。ただし、契約の解除や申し込みの撤回について特約がない(=利用規約などで定めがない)場合には、商品の引き渡しを受けてから8日以内であれば申し込みの撤回などが認められる形になります。なので、特にデジタル商品や消費期限の短い食品などを扱う場合には注意が必要かと思います。
特定商取引法では、通信販売に該当するサービスについて、
- 一般的には「特定商取引法に基づく表示」といわれている「広告」の表示
- 注文確定の最終画面での取引内容の確認や取引条件の提示
などの義務が課せられています。
特定商取引法とインターネットサービスについては、経済産業省の「特定商取引法ガイドホームページ」が丁寧な説明をしています。
利用規約で記載すべき内容
「契約の解除や申し込みの撤回について特約がない(=利用規約などで定めがない。)場合、8日以内であれば申込の撤が認められる。」わけですから、クーリングオフを認めない場合には、契約の解除やキャンセルについての規定は必須といえます。
利用規約に関わる法令2:資金決済法
資金決済法は「前払式支払手段」を発行する場合や資金移動などを規制する法令です。このうち、「前払式支払手段」の発行がインターネットビジネスには関わるケースがよくあります。
事前購入ポイント制、有償アプリ内通貨の導入
ポイント制を導入する場合でも、通常のネットショップなどで商品購入金額の数%を付与して次回の値引きに利用できるような場合には、特にこの法令の規制を受けることはありません。
この資金決済法の前払式支払手段に該当するのはあくまでもポイント(有効期間が6か月を超えるもの。)を事前購入してサービスを利用する形態です。
- 事前にレッスン受講分のポイントを購入させるオンラインレッスンサービス
- 事前にポイントを購入させて購読料を徴収する電子漫画や電子書籍アプリ
- アプリ内通貨を有償で購入させて、そのアプリ内のアイテムなどを購入できるゲームアプリ
などが前払式支払手段を発行するサービスに該当する場合があります。
前払式支払手段を発行する場合で、法令で定める基準を満たした場合には「前払式支払手段発行者」として届出または登録をしなければなりません。
また、一般的には「資金決済法に基づく表示」と呼ばれる事項を掲載しなければなりません。
利用規約で記載しなければならない事項
事前購入ポイントやアプリ内通貨を導入する場合には、利用規約で
- ポイントや通貨の使用条件
- ポイントや通貨の有効期限
- ポイントや通貨の消滅事由
などを定める必要があります。
利用規約に関わる法令3:下請法・独占禁止法
お仕事依頼系のマッチングサービスなどではこれらの法令の規制を受ける場合があります。
著作権譲渡を利用規約で規定する場合
イラストや画像、動画などの制作を依頼するマッチングサービスで、
- デフォルトの利用条件として、制作者側に成果物の著作権を依頼者に譲渡する場合
- 著作権の譲渡金額が仕事の対価に含まれている場合
には、制作者側が低めの料金設定で仕事を請けるケースが多々あります。
そういった場合には独占禁止法の「優越的地位の濫用」に該当する場合も出てきます。
あくまでも利用者同士のパワーバランスに影響するものでもあります。
なので、ユーザー間取引の免責条項などを利用規約でしっかりと定めておく必要があります。
運営の態様によって許認可や届出が必要なサービス
サービスの運営形態によっては、法令によって許認可や届出が必要となるケースも多々あります。
これらの許認可が必要になるケースでは、当事務所でも書類の作成や申請代行(職業紹介業については定型社労士紹介。)をすることもできます。
クローズドチャット、メッセージングサービス
サービス内に以下のシステムなどを設置する場合には、電気通信事業法という法令で「電気通信事業者届出」をしなければならない場合があります。
- クローズドチャットやユーザー間のメッセージ機能。(ChatWorkなどの外部サービスを利用する場合を除きます。)
- 音声やビデオ通話機能。(ZoomやSkypeなどの外部サービスを利用する場合を除きます。)
買い物かごや問い合わせフォームなどの通信を媒介するSaaSなど
SaaSなどで独自作成の以下のシステムなどを契約者に有償で利用させる場合も「電気通信事業者届出」が必要な場合があります。
- 問い合わせフォーム
- 買い物かご
- 予約システム
- メールサーバー
- メルマガ配信システム
求人求職マッチングサービス
求人情報を掲載するサービスや求人求職マッチングサイトなどは有料/無料職業紹介業許可との兼ね合いで運営方法などを工夫したほうがいいサービスです。
これらのサービスと有料/無料職業紹介業との兼ね合いについて、厚生労働省は、平成12年7月27日の通達「職発第512号」で以下のように基準を設けています。
インターネットによる求人情報・求職者情報提供と職業紹介との区分に関する基準
Ⅰ この基準は、法の適正な運用を確保するためには職業紹介に該当するか否かの判断を的確に行う必要があることにかんがみ、インターネットによる求人情報・求職者情報提供と職業紹介との区分を明らかにすることを目的とする。
Ⅱ この基準において、「インターネットによる求人情報・求職者情報提供」とは、情報提供事業者がホームページ上で求人情報又は求職者情報(いずれも事業所名、所在地、氏名、住所等個別の求人者又は求職者を特定できる情報を含むものをいい、以下単に「情報」という。)を求職者又は求人者の閲覧に供することをいう。
なお、これと併せて、応募又は勧誘のための電子メールの作成及び送信のための便宜を提供する等求職者又は求人者のための付加的なサービスを提供することを含む。
Ⅲ インターネットによる求人情報・求職者情報提供は、次の1から3までのいずれかに該当する場合には、職業紹介に該当する。
1 提供される情報の内容又は提供相手について、情報提供事業者の独自の判断による選別・加工を行うこと。
2 情報提供事業者から求職者に対する求人情報に係る連絡又は求人者に対する求職者情報に係る連絡を行うこと。
3 求職者と求人者との間の意思疎通を情報提供事業者のホームページを介して中継する場合に、当該意思疎通のための通信の内容に加工を行うこと。
Ⅳ Ⅲのほか、情報提供事業者による宣伝広告の内容、情報提供事業者と求職者又は求人者との間の契約内容等から判断して、情報提供事業者が求職者又は求人者に求人又は求職者をあっせんするものであり、インターネットによる求人情報・求職者情報提供はその一部として行われているものである場合には、全体として職業紹介に該当する。
この通達をまとめると、職業を「あっせんする。」に該当する以下の行為をする場合には許可が必要になると考えられます。
- 求人情報や求職情報に運営者が独自の判断で選別したり加工すること
- 求人者と求職者との間の連絡を取り持つこと
- メッセージ機能を提供して相互に連絡をさせるのはOK。(ただしメッセージを運営者が加工するのはNG。)
有料・無料職業紹介業許可はなかなかハードルが高い許可です。なので、求人求職のマッチングサイトの利用規約作成のご依頼をいただいた場合には、当事務所では上記に該当しないよう利用規約を作成しています。もちろんお客様のご意向を尊重し、許可が必要な場合は提携社労士を紹介しています。
祝い金が禁止に
求人求職マッチングサービスではもうひとつ注意しなければならない点があります。
利用者の入社が決まったことに対して祝い金を支払うサービスも多くありました。当事務所でも祝い金を支払う求人求職マッチングサイトやアプリの利用規約も数件作成したことがあります。
ですが、この入社が決まったユーザーに対して入社祝い金を運営者が支払うことが2021年4月1日から禁止されました。
もし求人求職マッチングサイトやアプリを開始する場合で、祝い金制度に類似するサービスをお考えの場合にはどのような内容が禁止されているかしっかりと確認する必要があります。
出会い系サイト・アプリ
出会い系サイトやアプリなどを運営する場合には「電気通信事業者届出」と「インターネット異性紹介事業開始届出」が必要になる場合があります。
他にも
- いわゆる相席サービス
- 婚活アプリ
- お見合いサービス
などもこれらの届出が必要になる場合があります。
アダルトグッズなどの販売、アダルトサイト
アダルトグッズなどを販売する場合やアダルトサイトを開設する場合には「性風俗関連特殊営業開始届出」が必要になる場合があります。
また、たとえばアダルト動画閲覧に際して事前購入ポイント制を導入する場合には上述の「前払式支払手段発行者」に該当する場合もあります。